シリア紛争、始まっている紛争“後”〜甚大な戦禍の代償と過酷な現状〜
シリア紛争、始まっている紛争“後”3
〜子どもたちの「こわいもの」と「夢」〜
紛争により凄惨な体験をした子どもたちの心の傷は深く、
今も恐れを抱きながら日々の生活を送っています。
しかしながら、彼らは未来への夢も持っています。
最終回の今回は、そんな子どもたちの声もお届けしたいと思います。
夢に向かって進むエネルギーが、
未来へ向かう推進力となる
ワールド・ビジョンは、シリアの子どもたち100人に「こわいもの」と「夢」を尋ね、6年間のシリア紛争が子どもたちの世界観などにどのような影響を与えたかを探る調査を行いました。
すると、43%の子どもたちが、身の安全に恐れを抱いていると語り、戦争、空襲、砲撃、爆発、という言葉が頻繁に発話される結果となりました。
経済的価値の損失を取り戻すことも大変な挑戦ですが、凄惨な体験をしてしまった子どもたちの心に深く刻まれた傷を取り除くことはできません。
だからこそ、そんな経験をくり返さずに、乗り越えて歩んでいけるように、また、そんな経験をする子どもをこれ以上増やさないために、和平への道のりを確実なものにしなければなりません。
しかし、子どもたちはこわがっているだけの存在ではありません。
夢を持っています。
「一番の夢はジャーナリストになること。ぼくは、本当に大切で価値のあることについて書きたいと思っている。だって、ここにはこわくて本当のことを話せない子どもたちがたくさんいるから」(モハメド君16歳)
「私の夢は、シリアにいるおばあちゃんに会うこと」(ジャスミンちゃん8歳)
「一番の夢はパイロットになること。世界中を飛び回れるなんて、とても素敵だよね」(ハムザ君8歳)
「夢を見続けられることを、夢見ています」(ギナちゃん16歳、ヌールちゃん14歳 姉妹)
夢を育み、そのために進んでいくエネルギーは、未来へ向かう推進力となるでしょう。
紛争経験国の4割以上は和平締結後5年以内に紛争状況に戻っている、という世界銀行による報告があります。
芽生えつつある内戦終結への希望を泥沼の振り出しに戻さないためには、紛争による有形無形の爪痕深いシリアと、大量の難民受け入れにより疲弊している周辺国の両方を支えることが不可欠です。
ようやく見えてきた紛争“後”を、子どもたちが夢に向かって歩める和平と復興の入口まで導くために、国際社会の力強い連携が今まで以上に求められているのです。
<引用文献>
https://www.worldvision.jp/about/item_img/TheCostofConflictforChildren.pdf
The World Bank (2003). Breaking the Conflict Trap: Civil war and Development Policy