日動画廊〜Professionals for Owners オーナーを支えるプロフェッショナルたち〜
アート業界全体の振興に貢献する。
今も受け継がれる創業者の思い
他の画廊と比較し、御社の強みは何でしょうか。
やはり、歴史ですね。
祖父の時代に創業して現在まで残っている画商、画廊はほとんどありません。
時代に翻弄されながらも、山あり谷ありを乗り越えてきたこと、そしてそのなかで、多くの作家と付き合い、亡くなられた後もご遺族と交流が続いていること。
その歴史が、私たちの実績であり誇りです。
また、美術館(笠間日動美術館)を持っていること、若手育成に力を入れていることも、弊社の大きな特徴です。
アートという文化を発展させるという大きな使命のもとビジネスをしている点は、他とは一線を画すと自負しています。
先進国のなかで、美術館に子どもが少ないのは日本くらいです。
一流のアートに触れる経験は、発想力やイマジネーションを豊かにします。
日本の学校教育では、絵を描く授業はあっても、絵を観ることについては何も教わりません。
大人になると、多くの人にとって絵は描くものではなく観るものになりますから、絵を鑑賞して楽しむ力を幼少期からつけておくことはとても大切だと思うのです。
ですから、美術館はもとより画廊にも、子連れで、家族で、カップルで、もっと気軽に来ていただきたいと思っています。
実際、ニューヨークの画廊へ行くと、親子連れもたくさん来ています。
本来画廊は、絵を買うだけの場所ではなく、一流の絵画を鑑賞し、アートに触れる場であるべきだと思うのです。
若手作家の発掘・育成については、いかがですか。
もともと祖父は、売れない作家や貧乏学生の作品を買い取ったり、若手の作家が美人画のモデルを探していれば紹介したりと、有名無名に関わらず作家の面倒をよくみていました。
また、父は自分の代になったときに作家の大半が大正生まれの年長者であることに危機感を覚え、昭和生まれの新人作家を発掘して若手を育成するという意味を込めて、「昭和会展」と名付けた公募展を創設しました。
実際に、第1回の昭和会賞受賞作家の奥谷博先生が文化功労賞を受賞されるなど、歴代受賞作家の多くが画壇で活躍しています。
祖父や父の精神は今も脈々と受け継がれています。
最近では、女性作家の支援にも力を入れています。
先日も、ある有望な若手作家が、出産・育児で絵描きを続けられないかもしれない…という状況にありました。
絵描き、とくにこれから活躍するという若手作家は、職業として証明が難しく、子どもを保育園に預けることも難しいのが現実です。
しかし、画材は子どもには危険ですし、子どもの世話をしながら絵なんて描けません。
そこで私たちは、彼女がいかに有望で才能のある作家であり、今こそが大事な時期であるかということを嘆願書にしたため、なんとか保育園に入ることができた、というケースもありました。
祖父は常に、「ピラミッドの頂点だけを扱うような画廊はダメだ」と言っていました。
ピラミッドの底辺にいる若い作家を育てていくことが、業界全体を育てることにつながるという祖父の信念は、今も変わらず日動画廊の軸になっています。
そして、その祖父の育てた作家が父の代に活躍し、亡くなった今でも物故作家として作品が評価されています。
同じく、父が育てた作家は、今、活躍しています。私も、孫の代まで作品が残る作家を育てたい、そう思っています。