ファンドを活用した事業承継
ファンドを活用した事業承継のメリットと留意点
事業承継においてファンドを活用した場合のメリットと留意点はどんなところにあるのでしょうか。
ファンドの関与期間が終わった後、どうするか?
そもそも、ファンドの最大の特徴として、「会社への関与期間が限定的」という点が挙げられます。
一般的には、ファンドは5年前後の限定された期間のみ会社に関与することになります。
裏を返せば、ファンドは当該期間を終えると出資金を何らかのかたちで資金化して投資回収を図り、会社への関与を終了させなければなりません。
これはEXITと呼ばれています。
EXITの方法としては、
①「経営者(後継者を含む)による買い戻し」、②「IPO(新規上場)による売り出し」、③「次なる投資家(事業会社など)への譲渡」
という3つのパターンが挙げられます。
どのEXITパターンにおいても、ファンドはEXITに至るまで営業面・管理面の両面から各種アドバイザー機能を提供し、会社の価値を高めるという命題をこなします。
会社の価値が高くならなければ、ファンドの次の担い手が見つからないためです。
したがって、ファンドという外部リソースを活用して、会社側は営業面・管理面のテコ入れができるという点がメリットとして挙げられます。
また、ファンドの活用においては、将来的に独立した企業体として成長する道を選択できる、という点もメリットと捉えることができます。
これは、事業会社によるM&Aのケースとは異なり、ファンドはM&A後の経営統合を趣旨としていないため、会社の独自性が維持されるためです。
ファンド活用時に留意すべきこととは?
一方で、ファンドがEXITを迎える際には、ファンドの次の担い手(EXIT先)がファンドの期待利回りを負担しなければなりません。
加えて、会社に対するリスクマネーの提供、各種アドバイザー機能の提供といった側面を加味すると、ファンドの期待利回りは、銀行借入による調達コストと比較すると相対的に高くなることにも留意が必要です。
ファンドがEXITを迎える際に、会社の業績や財務状況がファンドの関与開始時よりも見事に改善されていれば、ファンドの期待利回りの負担は妥当な対価として見なせるため、特段問題にはなりません。
しかしながら、予定通りの改善が進んでいないケースや逆に悪化してしまったケースにおいては、EXIT対価について、ファンド側とファンドの次の担い手(EXIT先)との間で折り合いをつけるのに一苦労を要する可能性があります。
このような状況下では、会社側も当事者として多かれ少なかれ当該折衝に巻き込まれるため、会社本来の事業運営とは異なるイレギュラーな実務対応が増える可能性がある点にも留意が必要です。
したがって、ファンドを活用する際には、ファンドのEXITまでの関与方針、EXIT時において選択しうるプランについて、会社とファンドとの間でなるべく詳細に共通認識を持っておくことが望ましいと言えます。